2010年9月11日土曜日

耐性菌感染

耐性菌に感染した報道をまとめた。
病院名 感染期間 細菌 感染者数
九州大学病院 2008年4月~ 多剤耐性肺炎桿菌(KPC遺伝子) 1
福岡大病院 2008年10月~2009年1月 多剤耐性菌アシネトバクター 23
船橋市立医療センター 2009年7月~ 多剤耐性菌アシネトバクター 1
独協医大病院 2009年4月~2009年5月 多剤耐性大腸菌(NDM1遺伝子) 1
都健康長寿医療センター 2009年5月~2010年8月 多剤耐性緑膿菌 20
帝京大病院 2009年8月~2010年9月 多剤耐性菌アシネトバクター 53
愛知医科大病院 2010年2月~ 多剤耐性菌アシネトバクター 1
藤田保健衛生大病院 2010年2月~2010年7月 多剤耐性菌アシネトバクター 24
有隣病院 2010年2月~2010年5月 多剤耐性菌アシネトバクター 8
都健康長寿医療センター 2010年2月~2010年9月 多剤耐性菌アシネトバクター 3
帝京大病院 2010年6月~2010年8月 多剤耐性緑濃菌 4
岩手医大付属病院 2010年8月~ 多剤耐性菌アシネトバクター 1
公立陶生病院 2008年 バンコマイシン耐性腸球菌 72
埼玉医大病院 2008年 バンコマイシン耐性腸球菌 60
(同大国際医療センター)
日本医科大学付属病院 2009年12月~2010年6月 バンコマイシン耐性腸球菌 46
済生会山口総合病院 2010年1月~2010年8月 バンコマイシン耐性腸球菌 39
北九州市立病院 2010年8月~2010年9月 バンコマイシン耐性腸球菌 8
全国39医療機関 2007年4月~2008年3月 多剤耐性菌アシネトバクター 51
全国37医療機関 2008年4月~2009年3月 多剤耐性菌アシネトバクター 81
全国49医療機関 2009年4月~2010年3月 多剤耐性菌アシネトバクター 97
記載時までの集計

抗生物質を使えば、耐性菌が出るのは当たり前だが、多くの病院は
感染検査をしていなかったようだ。
病院や医師、看護士によるかもしれないが、病室に入ると、
「耐性菌が出ているので、病室を出る時は、洗面台に備付の消毒液
(せっけん)で、手洗いをしてから出て下さい」と医師や看護士から
指導を受ける場合もある。診断に来た医師や看護士も患者を診るたびに、
手洗いをしている姿を見ることもある。
こう言う光景は珍しいと言うことになる。報道見てがっかりした。

報道を見る限り、印は、抗生物質を購入し、乱用しているため、規制する
とのこと。NDM1の報道で反発していた印政府も認めたようだ。
多剤耐性菌に対する未承認の抗生物質もあるようだが、教育や環境等が
整わないうちに承認しても、同じことを繰り返すと思う。

耐性病原体例
・多剤耐性結核菌
・ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)
・ペニシリナーゼ産生淋菌(PPNG)
・薬剤耐性HIV
・クロロキン耐性マラリア
結核、肺炎、淋病、HIV、マラリア等の知名度が高い病原体にも薬剤耐性
があるようだ。

米国
伝染病のために、395の新薬とワクチンを開発中とのこと。
・マラリア治療 6種新薬、5種ワクチン
・ブドウ状球菌感染症と敗血症治療 18種新薬とワクチン
・インフルエンザ(多型)や感染症を予防 145ワクチン
・88の抗生物質と96の抗ウイルス剤
・C型肝炎、敗血症と肺炎への新薬はfast-track指定

ブドウ状球菌感染症は、敗血症を引き起こし、今年、全米で21万5千人が
死亡する可能性がある。AIDSによる死亡者よりも多いとのこと。
新型インフルワクチンで、一部話題になったfast-track指定
(基本効能が臨床試験済みのため、成分の変更を行っても臨床試験を省略
できる制度?)。
製造、承認する側の論理もわかるが、購入する側の論理とはかなり異なる。
多数のために少数を犠牲にして良いのか。

日本大使館がインド在留邦人に耐性菌への注意を呼びかけたらしいが、
印では、遺伝子の命名ですでに話題になっていたようだ。駐印日本大使館
は何もしなかったと言うことか。

超多剤耐性アシネトバクター
NDM1


愛知、岩手でも多剤耐性菌・・・厚労省が報告義務化へ(10/09/10) テレビ朝日


Superbug: Bias against India? NDTV.com


---多剤耐性菌:アシネトバクター、過去3年で感染拡大--厚労省調査---
毎日新聞 2010年9月11日 東京朝刊
http://mainichi.jp/select/science/news/20100911ddm041040189000c.html

 ほとんどの抗生物質が効かない多剤耐性菌アシネトバクターが09年度、全国49の医療機関で計97人から検出されていたことが、厚生労働省研究班(主任研究者、荒川宜親・国立感染症研究所細菌第2部長)の調査で分かった。荒川部長は「多剤耐性のアシネトバクターが国内でも広く薄く出現していることを認識し、医療機関などの関係者は院内感染対策を徹底すべきだ」と話している。
 調査は3月、全国の200床以上の全医療機関約2700カ所に調査用紙を送って実施。4月末までに回答のあった771施設(回答率28・4%)の状況をまとめた。
 09年度までの3年間の検出状況を聞いたところ、同菌が検出された医療機関数と患者数は▽07年度は39施設(5・1%)51人▽08年度は37施設(4・8%)81人▽09年度は49施設(6・4%)97人--で、検出された患者数は年々増加。3年間で計92施設(11・9%)で検出されていた。
 3年間に菌が検出された検体の種類別では、痰(たん)が67%で最も多く、尿9・9%▽血液5・6%▽便3・9%▽その他13・5%--だった。
 院内感染が広がっていない点について、荒川部長は「菌株を検査しておらず詳細は分からない」としながらも、「現在問題になっている耐性度の高い菌に比べ、日本土着のおとなしい株の可能性がある。施設も感染防止対策を十分に行っていたため広がらなかったとみられるが、警戒を怠ってはならない」と分析している。【佐々木洋】


---北九州市立病院 耐性菌VRE8人感染 入院患者の受け入れ制限---
2010年9月11日 00:10
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/196783

 北九州市は10日、同市若松区の市立若松病院で入院患者8人が、抗生剤がほとんど効かないバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)に感染したことが確認された、と発表した。菌に共通の遺伝子があるため、院内感染の可能性が高いという。8人のうち80代男性1人が死亡したが、死因は別で、VREとの因果関係はないとしている。
 発表によると、8人は同区内の60-90代の男女で、いずれも外科患者。8月31日、肺炎で入院中の90代女性が受けた別の検査の結果でVRE感染が判明。ほかの患者も便検査をした結果、10日までにさらに7人の保菌者が見つかった。8人に発症者はおらず、10日までに3人が退院した。
 市によると、VREは腸内の常在菌で、免疫力が低下すると感染症を引き起こすことがある。
 病院は感染の事実を8月31日に保健所に報告、1日から入院患者の受け入れを制限している。記者会見した天野拓哉院長は「患者の隔離や職員の指導など対策を徹底し、拡大防止に努めたい」と述べた。


---バンコマイシン耐性腸球菌に46人感染 日本医大病院---
2010年9月10日15時8分
http://www.asahi.com/national/update/0910/TKY201009100298.html

 日本医科大学付属病院(東京都文京区)で昨年12月から今年6月にかけて、計46人の入院患者が抗生剤のほとんど効かないバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)に集団感染していたことがわかった。このうち計14人が死亡しているが、同病院から報告を受けた文京保健所は、感染との因果関係を否定している。
 病院は同保健所に通報したが、感染の事実は公表していなかった。
 同保健所などによると、昨年12月5日から今年2月15日にかけて、同病院の血液内科に入院している患者20人からVREが検出された。
 このうち、50代の男性患者が12月31日に発熱と下痢の症状を訴えた。ほかの患者からは症状が出なかったが、この男性を含む8人が死亡した。
 同保健所は同病院に対し院内感染対策の改善を指導した。その後、今度は今年5月18日から6月15日にかけて、集中治療室がある病棟にいた26人の患者からVREを検出。このうち6人が死亡した。
 同保健所は、同病院で死亡した14人の患者について「リンパ腫や白血病などの重い病気である上、VREの検査で陰性が確認された後になくなっていることから、死亡と感染に直接の因果関係はない」と説明している。
 VREは、最近では今年1~8月に山口市の済生会山口総合病院で39人、2008年に愛知県瀬戸市の公立陶生病院で72人の集団感染があった。07年に埼玉医大病院と同大国際医療センター(埼玉県)で起きた60人の集団感染では、VREが検出された入院患者15人が死亡したが、第三者による調査委員会で感染と死亡との因果関係が否定された。

〈バンコマイシン耐性腸球菌〉 腸球菌自体は腸内にいる細菌。この菌がメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の治療に使う抗生剤バンコマイシンに効かない能力を得た。その他のほとんどの抗生剤も効かないとされる。健康な人に感染しても問題ない。しかし手術後や高齢などで抵抗力が弱まっている患者に腹膜炎、肺炎、敗血症などの感染症を引き起こす。欧米では90年代に確認され、蔓延(まんえん)状態になっている。


---Nearly 400 Medicines and Vaccines in Development to Fight Infectious Diseases---
September 10, 2010 05:01 AM Eastern Daylight Time
http://www.businesswire.com/news/home/20100910005040/en

“Super Bugs” and Bioterrorism Agents among the Targets

BOSTON--(BUSINESS WIRE)--Critical challenges remain in the centuries-old battles against infectious diseases, particularly as bacteria and viruses mutate and as the threat of bioterrorism grows. Responding to this need, America’s biopharmaceutical research companies this year have 395 new medicines and vaccines in the pipeline to fight infectious diseases. All 395 are in later stages of development, meaning in clinical trials or under Food and Drug Administration (FDA) review.

Scientists have made huge strides against infectious diseases, which until the 1920s were the leading cause of death in the United States. Still, more than 9.5 million people worldwide die each year from infectious diseases. Of particular concern today are virulent forms of “super bugs” that have mutated and grown resistant to available antibiotics. Among medicines in development are those for resistant forms of tuberculosis and staph infections, according a new report, “Medicines in Development for Infectious Diseases 2010,” prepared by the Pharmaceutical Research and Manufacturers of America (PhRMA).

“Infectious diseases continue to cause great human suffering, and the effort to conquer them is one of the greatest human endeavors,” said PhRMA President and CEO John J. Castellani. “Many once-deadly diseases have been nearly wiped out or are effectively controlled thanks to medical progress, but much more needs to be done.”

Some of the diseases targeted plague the developing world, while others threaten the lives of humans in every country, including the U.S. In Africa, for example, a child dies every 45 seconds of malaria. Six medicines and five vaccines for malaria are currently in development, according to the PhRMA report.

Scientists are also working to prevent, treat or cure other devastating diseases that mostly strike people in the developing world, such as the Ebola virus, dengue fever, yellow fever, typhoid and cholera.

Increasing attention is also being paid to “super bugs,” like Methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA), that have spread throughout the world. In the U.S., two million drug-resistant infections are reported each year, causing great suffering and costing the health system up to $34 billion a year, according to the Infectious Disease Society.

Only two percent of staph infections in the U.S. were drug-resistant in 1974. The percentage jumped to 63% by 2004. Staph infections now kill more people in the U.S. than AIDS, according to the U.S. Centers for Disease Control and Prevention.

When staph bacteria spread to the bloodstream, a life-threatening illness known as sepsis can occur. Sepsis, which has increased by 91.3% over the last 10 years, is expected to kill 215,000 people in the U.S. this year.

Eighteen new medicines and vaccines to treat or prevent staph infections and sepsis are currently in development, according to the PhRMA report. Scientists also are developing treatments for infectious diseases as varied as herpes, rabies, meningitis and SARS.

A total of 145 vaccines are in development to prevent a variety of infections, including a number of forms of influenza. Additionally, 88 antibiotics and 96 antivirals are in development. Treatments for HIV infection are not included in the most recent report, but a 2009 survey identified 97 medicines and vaccines in testing for HIV/AIDS.

Of the 395 medicines and vaccines in the current report, 24 are on a “fast track” -- a process designed to facilitate the development and expedite the review of drugs to treat serious diseases and fill a critical, unmet medical need. The status is assigned by the FDA. “Fast track” medicines in development include those for hepatitis C, severe sepsis and pneumonia.

Scientists are also working to thwart the potential devastation of biological warfare agents. Ten separate treatments for anthrax and three for smallpox are in development. Although medical progress eradicated naturally occurring smallpox in humans worldwide by 1980, concerns remain that the virus could be used as a bioterrorism weapon.

Development of a new medicine or vaccine, from the laboratory to clinical trials to FDA approval, takes 10-15 years on average and costs $1.3 billion.

The full report, Medicines in Development for Infectious Diseases 2010, is available at www.phrma.org. Information about clinical trials is at www.clinicaltrials.gov.

PhRMA represents the country’s leading pharmaceutical research and biotechnology companies, which are devoted to inventing medicines that allow patients to live healthier lives. PhRMA members alone invested an estimated $45.8 billion in 2009 in discovering and developing new medicines. Industry-wide research and investment reached a record $65.3 billion in 2009.


---九大検出の多剤耐性肺炎桿菌、厚労省が調査へ---
2010年9月9日21時06分 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20100909-OYT1T00938.htm

 厚生労働省は9日、九州大学病院(福岡市)でほとんどの抗生物質が効かない新型の多剤耐性肺炎桿菌(かんきん)が検出されたことを受け、この菌の全国実態調査に乗り出すことを決めた。
 全医療機関に対し、情報提供や確認検査のための菌の送付などを求める通知を10日に出す。また、感染症法に基づく報告義務を今後課すかどうかも検討を始める。
 同大病院では、2008年4月に米ニューヨークの病院から転院した女性(当時35歳)の尿から、KPCという抗生物質分解酵素を持つ多剤耐性肺炎桿菌が見つかった。KPCは、欧米やイスラエル、中国などで検出が相次いでおり、院内感染が問題となっている。
 厚労省は、KPCとは別のNDM1酵素を持つ多剤耐性大腸菌が独協医科大学病院で検出されたことから、実態調査を行う計画にしていたが、新たにKPCも調査対象に加えることにした。


---多剤耐性菌:岩手医大付属病院でもアシネトバクター検出---
毎日新聞 2010年9月9日 20時08分
http://mainichi.jp/select/science/news/20100910k0000m040048000c.html

 盛岡市の岩手医大付属病院の入院患者1人から、多剤耐性菌の疑いがあるアシネトバクターが検出されていたことが分かった。患者に感染による症状はないという。他の患者からアシネトバクターは検出されておらず、病院側は院内感染ではないとみている。
 同病院感染症対策室によると、患者が着けた人工呼吸器周辺から、8月下旬にアシネトバクターを検出。培養し3種類の抗生物質を投与したが効かず、今月1日、多剤耐性の疑いが高いと判明。9日に盛岡市保健所に届け出た。今後、遺伝子検査などを行う。
 患者は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に感染しており、2週間に1度、使用機器を検査していた。入院当初から接触感染防止対策を取った病室を使っており、8月中旬の前回検査時にアシネトバクターは検出されなかった。
 病院は今後、この患者と主治医や看護師が同じ他の患者にも、同様の定期検査を行う。
【山口圭一】


---クローズアップ2010:多剤耐性菌アシネトバクター 強い「生命力」で拡大---
毎日新聞 2010年9月9日 東京朝刊
http://mainichi.jp/select/opinion/closeup/news/20100909ddm003040090000c.html?link_id=RSH02

 帝京大病院(東京都板橋区)を皮切りに、次々と明らかになった多剤耐性菌アシネトバクターの院内感染。感染拡大の原因として、病院側の認識の甘さや報告の遅れなどが問題視されているが、専門家は対策が難しい同菌の特性も一因に挙げ、今後も感染が相次いで発覚する可能性を指摘する。これまで打ち出されてきた国の院内感染対策も、十分とは言い難いのが実情だ。【佐々木洋、福永方人】

◇乾燥に耐え生存 帝京大では2度沈静傾向に
 「アシネトバクターは高度耐性菌の中でも『生命力』が強く、対策は非常に難しい」。自治医科大病院の森沢雄司・感染制御部長は指摘する。感染が収まったように見えても、病院内のさまざまな場所で菌が生き延び、再び感染が拡大する恐れがあるという。
 帝京大病院では今年2月、4人の感染者が出たが、3月には1人に減少。同病院感染制御部の対応は、院内各科に通知を出すなどして注意を呼びかけるにとどまった。しかし、4月から5月初めにかけ、一気に約10人が感染し、同病院は初めて「院内感染」と認識。全感染者を個室で管理し、病棟を一時閉鎖するなど、拡大防止に乗り出した。
 その後、6月には6人の感染者が出たものの、7月は1人で同月末時点での保菌者は計3人に減り、沈静化したように見えた。同病院は8月4日に厚生労働省と東京都の定期検査を受けたが、院内感染については報告しなかった。都の担当者は「定期検査の時点では院内感染は終息傾向にあると判断し、報告しなかったのだろう」と見る。
 しかし、8月に同病院が精度の高い手法で全病棟を検査したところ、新たに7人の感染が確認された。結局、感染者は計53人に上り、いまだに感染は終息していない。
 一方、3人の感染者が出た都健康長寿医療センター。このうち76歳の男性は今年2月、帝京大病院から転院した。転院約2週間前の検査ではアシネトバクターは陰性だったが、転院当日の同センターでの検査では陽性となった。
 帝京大病院は「転院までの2週間で感染した可能性はゼロではない」と話す。
 こうした状況について森沢部長は「例えば緑膿(りょくのう)菌は乾燥に弱く、水回りの対策で済む。しかし、アシネトバクターは乾燥に強く、床やカーテン、パソコンのキーボードなど通常の環境でも数週間以上生存する。病室などを1回調査しただけで、菌の有無を判断するのは難しい」と指摘する。欧米の病院では、医療スタッフが使うPHSを介して集団感染が発生したケースもあるという。

次々と明らかになる院内感染は今後も拡大するのか。
 日本感染症学会理事の舘田一博・東邦大准教授(微生物・感染症学講座)は「院内感染をゼロに抑えるのは不可能。アシネトバクターは既に国内でも広がっていると考えられ、検査を強化すれば新たな院内感染が発覚する可能性がある。院内の監視体制を強め、菌が検出されたら速やかに保健所などに報告し、消毒で拡大を防ぐなど、本来の感染対策を改めて徹底すべきだ」と指摘する。

◇国の対策、後手に回る
 国の院内感染対策は、セラチア菌や多剤耐性緑膿菌などによる集団感染が問題化するたび、法律・省令の改正や、自治体への通知などによる対応を繰り返してきた。後手に回ってきた感は否めず、感染症対策のスタッフの少なさの解消など抜本的な対策は先送りにされてきたのが実情だ。
 国は04年1月、大学病院などの特定機能病院について、省令改正で専門知識を持つ専任の担当者を置くことを義務化。07年4月施行の改正医療法では、診療所などを含めたすべての医療機関に院内感染マニュアルの策定を義務づけるなど、医療機関の安全対策に院内感染対策を初めて明確に位置づけた。
 アシネトバクターを巡っては、福岡大病院の院内感染を受け、09年1月、厚労省が対策を求める通知を都道府県に出した。しかし、帝京大病院では、感染制御部の医師らが通知を知りながら素早い対策を取らずに被害を拡大させ、保健所への報告も遅れた。このため厚労省は今月6日、改めて対策の徹底を求める通知を出した。
 帝京大病院の対応について厚労省の担当者は「専任職員といっても、どの程度機能していたかは今後の調査次第。医療機関ごとに相当意識の差がある可能性もある。行政への届け出の遅れは、感染症法の報告義務対象になっていなかったからではないか」とみる。
 同法では、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌など5種類の耐性菌について発生時の報告を義務づけているが、アシネトバクターは対象外だった。このため長妻昭厚労相は独協医大病院で国内初確認された「NDM1」も含め、届け出対象に含めるか検討を指示した。新しい耐性菌の広がりを把握するため、全国的な調査に乗り出す方針も固めた。
 感染症専門医の少なさなど、欧米に比べ遅れが指摘されていた日本の院内感染対策。長妻厚労相は7日の会見で「専門家の意見も聞きながら実態把握を進め、これを機に対策を徹底したい」と語った。


---多剤耐性菌:感染者、相部屋で治療 32人未検査で転・退院--東京・板橋の病院---
毎日新聞 2010年9月9日 東京朝刊
http://mainichi.jp/select/science/news/20100909ddm041040107000c.html

 多剤耐性菌アシネトバクターの入院患者3人への感染が発覚した地方独立行政法人・東京都健康長寿医療センター(板橋区)は8日、院内の情報共有ミスから、うち1人に感染拡大を防ぐ措置をとらないまま、相部屋で治療を続けていたと発表した。感染者と相部屋だったのに未検査のまま転・退院した患者もおり、井藤英喜センター長は「深く反省している」と謝罪した。
 同センターでは、2月に帝京大病院から転院してきた76歳の男性の感染が判明し、6月に死亡。7月に86歳の女性の感染が判明したが、院内感染の恐れは低いという。だが、7月15~22日に女性と集中治療室でベッドが隣だった82歳の男性も感染し、女性から感染した疑いが濃厚という。
 3人目からは8月9日に菌を検出。検査担当者や主治医は感染制御の担当医に伝えず、対策をしないまま9月6日まで大部屋で治療を続けた。2~3人目の感染者と集中治療室や病室が一緒だった患者は54人に上る。うち22人は検査で陰性だったが、32人は未検査のまま転・退院。2人は転院先が分かったが、30人は調査中だ。
 同センターが3人目を把握したのは今月7日。6日に別の病院に転院し、転院先が診断書類で菌検出に気づいたためだった。井藤センター長は「認識が甘い医師が多かったかもしれない」と述べた。
 一方、同センターでは昨年5月以降、多剤耐性緑膿(りょくのう)菌に20人が感染し、10人が死亡していた。うち18人(死者9人)は院内感染が疑われ、昨年6月~今年6月に死亡した72~86歳の男女4人は、感染との因果関係が否定できないという。「発症が断続的だった」として、都などに報告していなかった。【石川隆宣、田村彰子】


---感染発覚時は担当医師1人 救急医療の重責担えず 帝京大病院---
2010.9.8 23:42
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/100908/crm1009082343041-n1.htm

 多剤耐性アシネトバクター(MRAB)による院内感染問題で、帝京大病院では多くの感染者が発覚した5月の連休明けまで専任で感染症対策に従事していたのは医師1人だけだったことが8日、分かった。立ち入り検査をした厚生労働省は「2人態勢だった」としていたが、医師以外に専従看護師が入ったのは連休明け以降だった。後手後手の対応に、長妻昭厚生労働相は同日の衆院厚労委員会で「遺憾だ」と述べた。
 態勢の不備は公表された同病院の調査委員会外部委員報告書で判明した。報告書は、感染症対策を担当する感染制御部が脆弱(ぜいじゃく)な体制だったことについて、「病院の責務は極めて大きい」と指摘。感染が拡大した4月には細菌検査室の責任者が不在だったことも分かった。
 さらに、「病院長を主体とした危機管理体制が機能していない」と批判し、公的機関への感染状況の報告も促していたが、実際に同病院が報告したのは調査委員会から1カ月後の今月2日だった。
 感染患者数が集計ミスで増加したことも判明。8日、森田茂穂(しげほ)院長は「患者、家族の方におわび申し上げます」と頭を下げた。

■2カ月前に死亡例
 同病院は、これまで患者46人が感染して27人が死亡、うち9人は感染と死因との関連が否定できないとしていた。しかし、新たに7人の感染と、うち4人の死亡が発覚した。最も早い死亡時期は昨年8月。前回発表では最初のMRAB感染者の死亡例を昨年10月としていたが、実際には2カ月も前に感染者から死亡者が出ていたことになる。
 新たな7人はカルテに「複数の抗菌剤に耐性のあるアシネトバクターに感染」などと記されていたことも分かった。同病院の感染症マニュアルでは、多剤耐性菌を確認したら感染制御部に報告することになっているが、報告した医師はいなかった。
 さらに、同病院でMRAB感染がないとした患者が、都健康長寿医療センターへ転院した当日にセンターで感染を確認されていたことも判明。帝京大病院の意識の薄さが際立った。

■今後、感染者増も
 集計ミスについては「一定時期より前についてはコンピューターのシステムを使わなかったため」と説明。同病院は電子カルテ検索用のコンピューター集計システムを今年7月に導入したが、システムを利用したのは今年4月から8月末までの症例のみ。3月末以前の症例は手作業で集計したため漏れたという。
 今後、さらにさかのぼって感染確認をする。森田院長は「今後、感染者数が増えないとはいえない」とうなだれた。
 同病院は救急搬送受け入れを自粛。年間延べ約30万人が入院し、時間外だけで約6千台の救急車を受け入れてきた同病院は、医療機関としての重責を自ら放棄せざるを得なくなった。


---耐性菌でインド在留邦人に注意 日本大使館---
2010年9月8日 22時18分
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2010090801001154.html

 【ニューデリー共同】在インド日本大使館は8日、ほとんどの抗菌薬が効かない多剤耐性菌による院内感染が日本で問題化していることを受け「今後、この耐性菌が世界的に広がることが懸念される」として、在留邦人に注意を呼び掛けた。
 大使館による在留邦人への通知文書では、英医学誌を引用し、調査した感染者29人のうち17人がインドかパキスタンへの渡航歴があり、そのうち14人がインドやパキスタンの病院への入院歴があったと指摘した。
 だが「現時点ではインドで医療行為を受けることのリスクや感染予防法は不明」とし、大使館として引き続き情報収集に努めるとしている。


----多剤耐性緑膿菌で4人死亡 都医療センター、20人が感染---
2010年9月8日 19時57分
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2010090801000631.html

 多剤耐性菌による院内感染が疑われる東京都健康長寿医療センター(板橋区)の井藤英喜センター長らが8日、都庁で記者会見し、昨年5月以降にセンターの患者20人から多剤耐性緑膿菌を検出し、うち4人が死亡したと発表した。感染と死亡との因果関係は否定できないという。
 センターによると、20人のうち18人は院内感染の可能性がある。感染対策のため医師、看護師らによる対策チームを設置して、抗生物質の使用状況を把握して、使用薬剤などの見直しを進める。
 センターは今年2~8月までに患者3人から多剤耐性アシネトバクター菌を検出。うち近くの帝京大病院から転院した男性患者(76)が肺炎で死亡した。都は8日夕、医療法に基づいてセンターに立ち入り検査。(共同)


---インド、抗生物質の規制強化…多剤耐性菌発生で---
2010年9月8日19時28分 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20100908-OYT1T00979.htm

 【ニューデリー=新居益】新型の多剤耐性菌の発生源と指摘されるインドの保健省は、抗生物質の乱用に歯止めをかける方針を固めた。
同国内での抗生物質の乱用が多剤耐性菌の発生につながった可能性を、インド政府自ら認めた形だ。
 同省は抗生物質の使用に関する指針を策定するため、専門家による特別委員会を設置したことを3日、明らかにした。特別委員会は6週間以内に提言をまとめる。
 ラオ保健次官は指針について、「(インドでは)多くの人々が(医師の診察を受けず)自分で薬を買い求めるため、抗生物質の多用により、(体内の菌が)薬物への耐性を獲得することにつながる。これはやめさせなければならない」と、インド紙ミントに語った。


---帝京大病院の多剤耐性菌感染者、実は7人多い53人---
2010年9月8日11時43分
http://www.asahi.com/national/update/0908/TKY201009080141.html

 帝京大病院(東京都板橋区)は8日、大半の抗生剤が効かない多剤耐性の細菌アシネトバクターへの感染者が、これまで発表していた46人ではなく53人だったことを明らかにした。追加された7人のうち4人は死亡していたが、感染との因果関係はまだわかっていない。
 帝京大病院では、感染者の増加を受け、原則としてすべての救急車の受け入れと、すべての新規の入院患者の受け入れの自粛を同日から始めた。入院中の患者全員についても感染していないか細菌の有無を検査する。1週間をめどに結論を出したいという。
 カルテを再確認したところ感染者の集計漏れが見つかり、昨年1月にさかのぼって調べ直したところ、新たな感染者が合計7人見つかった。
 これまで因果関係が否定できない死者は9人だった。新たにわかった死亡者4人は62~81歳の男女。感染との因果関係は不明。
 今後、全入院患者の細菌検査をする。重症患者についてはすでに検査を実施しており、今後の検査対象は約800人。新たな検査によりさらに感染者が増える可能性がある。
 病院は、緊急に診なければならない場合には救急車や入院患者を受け入れるとしているものの、原則として救急車や新規入院患者の受け入れの自粛を始めたことにより、地域の医療への影響が懸念される。病院のベッド数は1154床にのぼる。
 同病院は救急医療に力を入れてきた。命にかかわるような最も重症な患者の治療を担うため「最後のとりで」ともいわれる3次救急の指定も受けている。重症の救急患者を診る救命救急センターに加え、中等度から軽症の患者も受け入れてきた。救命救急センターでは年1200人の重症患者、中等度から軽症の患者は年のべ9千台の救急車による搬送を受け入れてきた。
 新病棟に移った昨年5月からは、軽症者を含めて救急患者を一元的に受け入れるER(救急室)を開設した。
 同病院では今年6月から8月にかけ、別の多剤耐性の細菌、緑膿菌(りょくのうきん)の感染者も4人出て、うち1人が死亡している。
 都や帝京大病院によると、都健康長寿医療センターで亡くなった患者は今年2月23日に帝京大病院から転院した。
 都は、この患者から、同医療センターに転院してきた初日の検査で多剤耐性アシネトバクターが検出されていることから、帝京大病院に入院中に感染した可能性が高いとみている。
 厚生労働省と東京都は今月6日、多剤耐性アシネトバクターの集団感染を受け、同病院に立ち入り検査を実施した。
 厚労省は国立感染症研究所の専門家を帝京大病院に派遣するとともに、多剤耐性アシネトバクターの発生状況について全国調査に乗り出す方針を決めている。


---【スーパー耐性菌】世田谷と板橋の病院でも感染 板橋は帝京大から転院---
2010.9.8 11:37
http://sankei.jp.msn.com/life/body/100908/bdy1009080841000-n1.htm

 帝京大学病院などで多くの抗生物質が効かない細菌アシネトバクターの院内感染が相次いでいる問題で、新たに東京都世田谷区の有隣病院と板橋区の都健康長寿医療センターでも院内感染が発生している疑いがあることが8日分かった。東京都は7日に有隣病院に医療法に基づく立ち入り調査を行っており、都健康長寿医療センターにも8日午後に実施する。
 有隣病院では、これまでに8人が感染、うち4人が死亡し、細菌との因果関係を否定できない死亡者が2人いるという。
 都によると、同病院でアシネトバクターの感染者が初確認されたのは今年2月で、5月に5人が感染。感染者は同じ病棟に集中しており院内感染の可能性が高いとしている。
 感染したのは59~100歳の男女計8人で、死亡した4人のうち2人はアシネトバクターとの無関係とみられるものの、他の2人についてはすでに検体がないため、因果関係を否定できないという。
 一方、都健康長寿医療センターでも3人が感染し、うち1人が死亡した。アシネトバクターとの因果関係は不明だが、死亡した男性(76)は2月に帝京大病院から転院していた。同病院では2月に1人、7~8月に2人の感染者が発生。一時、隣同士のベッドにいたという。
 有隣病院が都に報告したのは今月6日、都健康長寿医療センターは同7日だった。都によると、有隣病院は「院内感染と疑わなかったので治療に専念した」と説明しているという。
 都は「院内感染の疑われる中、早急に報告しなかったことは遺憾だ」としている。都は今後、遺伝子検査などを実施する方針としている。


---多剤耐性緑膿菌「思いのほか広がっている」---
2010年9月8日11時17分 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20100908-OYT1T00357.htm

 多くの抗生物質が効かない多剤耐性緑膿(りょくのう)菌(MDRP)が、全国の医療機関の6割で検出されたことが、日本化学療法学会の調査でわかった。
 MDRPは帝京大病院で今年6月以降、患者4人が感染、うち1人が死亡している。同学会は「思いのほか広がっている」と警戒を呼びかけている。
 調査は2009年に実施し、全国752施設のうち約66%が、「施設内から検出したことがある」と回答した。うち約半数の施設では、尿路感染症や肺炎、敗血症などの発症者が出た。
 調査を行った昭和大学の二木芳人教授(臨床感染症学)は「この菌に有効な薬が国内では未承認。現在は医師がこの薬を個人輸入している。国は早急に承認してほしい」と話している。


---院内感染:対策、過半数「専任者1人」 83特定機能病院で--毎日新聞集計---
毎日新聞 2010年9月8日 東京朝刊
http://mainichi.jp/select/science/news/20100908ddm041040121000c.html

 高度な医療を行う施設として国が承認した全国83の「特定機能病院」のうち44病院は、院内感染対策の専任者が1人しかいないことが、毎日新聞の集計で分かった。厚生労働省の08年調査によると、全病院では約7割に専任者がいない。院内感染が問題となった帝京大病院(東京都板橋区)の専任者は2人で、都は専任者の少なさを指摘したが、全国の多くの病院で院内感染対策の体制が十分とは言い難い状況にあることが明らかになった。【福永方人、佐々木洋】
 特定機能病院が厚労省に提出した業務報告書(09年10月時点)を集計すると、専任者数は群馬大病院と順天堂大付属順天堂医院の6人が最多で▽5人=5病院▽4人=4病院▽3人=5病院▽2人=21病院▽1人=44病院▽不明=2病院。厚労省は特定機能病院の要件として院内感染対策の専任者を1人以上置くことを義務づけているが、複数の専門家は「そもそも1人では少なすぎる」と指摘する。しかも「専任者」なのに、他の業務もこなす医師らも少なくないという。
 また、厚労省の医療施設調査(08年)によると、全国8794病院のうち、院内感染対策の専任者がいるのは2787病院(31・7%)にとどまる。900床以上の大規模病院でも4割に満たない。
 院内感染対策スタッフの仕事は▽対策マニュアルなどの作成や実施状況の監査▽院内感染発生状況の監視▽抗菌薬の使用状況のチェック▽院内の講習会での指導▽感染疑い事例があった場合に感染経路の特定作業や感染拡大防止策を進める--など多岐にわたる。
 日本感染症学会理事の賀来満夫・東北大教授(感染制御学)は「人手不足の病院が多く、帝京大と同様の問題は他の病院でも起こりうる。人員不足の解消策をもっと議論し、院内感染対策の支援や人材育成を早急に進める必要がある」と指摘する。
 そもそも日本は感染症の専門医が少ない。同学会などによると国内の専門医は1019人で、欧米の6分の1~7分の1程度。同学会は適切な院内感染対策のためには専門医3000~4000人が必要と試算している。
 こうした状況について、順天堂大大学院の堀賢准教授(感染制御科学)は「現場で行う院内感染対策自体には診療報酬がつかず、投資をする余裕がない病院が多い。だが、院内感染を減らせば患者の早期退院や手術数増加につながる。結果的に病院の収益は向上すると発想を転換し、体制を強化すべきだ」と訴える。

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■院内感染対策専任者の配置率
病床数      病院数  専任者配置率
   ~ 99床 3339 27.8%
100~299床 3876 31.9%
300~499床 1111 37.8%
500~699床  315 43.2%
700~899床   90 47.8%
900床以上     63 39.7%
合計       8794 31.7%
※08年、厚労省調査


---【帝京大院内感染】国への報告義務づけ 多剤耐性菌 新型は週内に全国調査---
2010.9.7 21:01
http://sankei.jp.msn.com/life/body/100907/bdy1009072102008-n1.htm

 帝京大病院でほとんどの抗菌剤が効かない多剤耐性アシネトバクター(MRAB)による院内感染が発生し、患者が死亡したことを受け、厚生労働省は7日、医療機関に対し、MRABの感染例を国に報告するよう義務づける方針を固めた。独協医科大病院で国内初の感染が確認された新型の多剤耐性菌については週内に感染実態を把握するための全国調査に乗り出す。
 帝京大病院で46人の感染が確認されているMRABは、土の中などに生息するアシネトバクター菌が、複数の抗菌剤に対する耐性遺伝子を獲得したものだ。
 2000年ごろから欧米で広がり始め、国内では一昨年から今年にかけ、帝京大病院以外にも福岡大病院など4医療機関で患者への感染が確認されており、国内に広がりつつある。
 現在、感染症法に基づく耐性菌の国への報告義務はバンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌など5種類に限られている。MRABは報告義務がないため感染の実態把握が難しかった。厚労省は感染症の専門家による部会を早期に開催し、報告を求める医療機関を検討するなど制度を見直す方針。
 一方、独協医科大病院で確認された新型の多剤耐性菌については、今週中に自治体に対して通知を出し、全国調査に乗り出す方針。
 新型の多剤耐性菌は抗菌剤を分解するNDM1という遺伝子を持ち、インドやパキスタンの医療機関から欧州に拡大した。
 独協医科大病院で見つかった新型はNDM1を持つ大腸菌だったが、人の腸内にいる肺炎桿(かん)菌(きん)や病原性の強いサルモネラ菌などにうつることも懸念されている。
 新型耐性菌の解析には高度な遺伝子検査が必要となるため、国立感染症研究所に各医療機関からの検体を集めて分析する見通し。


---2例続けば院内感染の疑いを 多剤耐性菌で学会が対策---
2010年9月7日 19時54分
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2010090701000917.html

 帝京大病院で多剤耐性アシネトバクターの院内感染で入院患者9人が死亡した問題を受け、日本感染症学会(理事長・岩本愛吉東京大教授)は7日、同一施設で2例続けてこの菌が検出された場合は、院内感染の可能性を考えて対応するなどの対策を公表した。
 同学会は近く、これとは別のNDM1遺伝子を持った多剤耐性の腸内細菌への対応策についても公表する。岩本理事長は「多剤耐性細菌の院内感染や海外で感染した症例が立て続けに起きたことを受け、関連する他の学会とも強く連携して対応したい」と話している。
 学会によると、多剤耐性アシネトバクターは多剤耐性緑膿菌と同様に、カルバペネム剤など3系統の薬剤に耐性を示すが、コリスチンとチゲサイクリンという薬は有効とされる。この2剤は現在国内では承認されていないが、医師が個人輸入で使うことは可能だとしている。
 また現在、日本では多剤耐性アシネトバクターが分離されることは極めてまれで、2例続けて分離された施設は院内感染対策が重要と指摘した。(共同)


---新耐性菌:国内で初確認…NDM1保有 独協医大---
毎日新聞 2010年9月6日 21時32分(最終更新 9月6日 21時40分)
http://mainichi.jp/select/science/news/20100907k0000m040089000c.html

 栃木県壬生町の独協医大病院は6日、ほとんどの抗生物質が効かない新しい耐性菌が入院患者から検出されたと発表した。インドや欧州で感染が広がっている「NDM1」と呼ばれる遺伝子を持つ大腸菌で、国内初の感染確認となる。患者は退院して現在は保菌しておらず、他の患者への感染もないという。【泉谷由梨子、山下俊輔】

◇50代男性、昨年感染
 感染者はインド渡航歴がある50代の日本人男性で、帰国後の昨年4月、別の病気で入院した。5月中旬に約38度の発熱があり、血液検査で抗生物質が効かない多剤耐性大腸菌が検出された。
 同病院は今年8月、厚生労働省のNDM1への注意喚起や、英医学誌の論文から、大腸菌がNDM1遺伝子を持つ可能性があると推測し、保存菌の遺伝子を検査した。その結果、8月27日にPCR法で陽性が確認され、30日に遺伝子配列がNDM1遺伝子と100%一致した。検査結果は、27日と30日に栃木県県南健康福祉センターに連絡し、県は30日、国立感染症研究所に報告したという。
 男性は個室に入院し、医師らも耐性菌が検出されてから手袋やマスクなどで院内感染対策を強化した。男性は多剤耐性大腸菌検出は1回だけで、昨年10月の退院時には自然治癒していたという。
 同病院の菱沼昭准教授によると、男性はインドで医療機関を受診しており、同国で感染した可能性が高いという。菱沼准教授は「毒性が高い菌ではない。健康な方なら菌を持っていても症状は出ないと思う」と話し、北島敏光病院長は「症例は初のケースだが感染拡大を防止できた」としている。


---抗生物質多用に警告、耐性菌問題で細菌学会---
2010年9月4日21時43分 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20100904-OYT1T00900.htm

 日本細菌学会は、帝京大病院などで複数の抗生物質に耐性を持つ菌の発生が相次いでいることを受け、医療機関で抗生物質を安易に使わないことを求める提言を年内にもまとめることを決めた。
 欧米に比べ、抗生物質が多用されていることが、耐性菌発生の原因と指摘されている。
 同学会理事の笹川千尋・東京大医科学研究所教授は「安価な抗生物質の後発薬が増えており、耐性菌の発生は今後さらに大きな問題になる恐れがある」と警告している。

---アシネト菌感染、愛知でも 藤田保健衛生大病院で24人---
2010年9月4日 夕刊
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2010090402000194.html

 多剤耐性アシネトバクター菌の院内感染問題で、藤田保健衛生大病院(愛知県豊明市)でも二月以降、入院患者二十四人が感染していたことが分かった。病院は菌の確認後に保健所に報告。患者は六人が死亡したが、感染による死者はいないとみている。
 病院によると、二月十日に初めて患者一人から菌を検出。さらに患者五人からも検出したため、同十五日に緊急会議を開き、十六日に保健所に伝えた。その後も救命救急センターを中心に菌の検出が続いた。七月二十三日を最後に、新たな菌の検出はない。院内感染の調査、指導をする国立大学付属病院感染対策協議会が調べたところ、死亡した六人のうち五人は敗血症や消化管出血などの重篤患者で、感染が死因ではないと判断。脳出血で入院した患者は肺炎を起こして死亡し、別の菌が検出された。
 この患者はアシネトバクター菌の影響を完全には否定できないという。
 国立感染症研究所が約二十菌株の遺伝子を検査した結果、すべて同一菌株に由来し、院内で感染が広がった可能性が高い。患者が入院していた室内や、一部病棟の汚物室の床などからも菌を検出した。同病院は近隣の医療機関にも状況を通知した。
 星長清隆院長は「監視体制を強化している。地域や行政と連携して感染防止に努めたい」と話した。
 アシネトバクター菌は二〇〇八年十月から〇九年一月に福岡大病院(福岡市)で患者二十三人が感染し、四人が死亡。今年に入り船橋市立医療センター(千葉県船橋市)、愛知医科大病院(愛知県長久手町)でも患者から菌が検出された。帝京大病院では昨年八月~今年九月一日に患者四十六人が感染したことが判明。九人の死因になった可能性がある。


---帝京大病院「感染防止体制が弱い」 8月に国・都が指摘---
2010年9月4日15時2分
http://www.asahi.com/national/update/0904/TKY201009040135.html

 帝京大医学部付属病院(東京都板橋区)で発生した多剤耐性の細菌アシネトバクターによる院内感染問題で、国と東京都が8月の定期検査時に同病院に院内感染の防止体制を強化するよう指摘していたことが明らかになった。都は感染が46人に上った原因について「体制が弱く、結果として防ぎきれなかった可能性がある」としている。検査時に、今回の院内感染についての報告は病院側から特になかった。
 今回の問題について警視庁は業務上過失致死の疑いも視野に週明けにも病院関係者から事情を聴く方針だ。
 都や国によると、国は8月4日、高度な医療を行う「特定機能病院」に対する定期検査を実施。都も独自の検査のため同行した。その際、同規模の病院よりも帝京大病院の感染防止対策に専従する人数が少なかったため、体制を強化するよう求めたという。このときまでに、同病院では感染との因果関係が否定できない患者の死亡が7人あった。さらに、この指摘以降でも、8月中に2人が亡くなっている。
 また、院内の調査委員会でも7月末に、「感染制御部スタッフの専従人員の拡充」を指摘されていたという。
 同病院のベッド数は1154床。定期検査時は、同病院の院内感染防止対策の専従職員は、看護師1人のみだった。ほかには、医師1人が専任だった。
 都医療安全課の田中敦子課長は「同規模の病院であれば、多いところで専従職員を3人おいている病院もある」と話した。厚生労働省の担当者も「この規模の病院で院内感染対策の専任医師が1人というのは少ない。対策に力を入れている同規模の病院では、感染対策に携わる医師が5、6人いるところもある」と指摘する。
 また、同じ規模の特定機能病院の中には、感染管理の専従職員として、複数の認定看護師を配置しているところもある。日本看護協会が認定する資格だ。同協会のウェブサイトによると、帝京大病院には、感染管理の認定看護師は配置されていない。

 帝京大病院は院内感染を公表した3日の記者会見で「抜本的な改革が必要だが、人員的にぎりぎりの状態でやっている」と説明した。
 一方、広島大病院感染症科の大毛宏喜教授は「検査部で薬剤耐性傾向の菌が出たら、その情報をすぐに感染対策者に上げてもらうシステムを作っておくことが大切」と指摘する。
 帝京大病院の場合、多剤耐性菌への感染者が20人ぐらい出て、4~5人が死亡する今年2月になるまで、感染制御部に報告がなかった。
 同病院は4日、今回とは別の多剤耐性緑膿(りょくのう)菌による感染で1人が死亡した疑いがあることを認めた。(小坪遊、岡雄一郎)


---帝京大病院:多剤耐性菌9人死亡 報告遅れ、対策後手 「散発的」と楽観---
毎日新聞 2010年9月4日 東京朝刊
http://mainichi.jp/select/science/news/20100904ddm041040143000c.html

◇昨夏に発生、感染拡大
 帝京大病院(東京都板橋区)で3日発覚した、多剤耐性菌アシネトバクター・バウマニによる院内感染。46人もの感染者を出した背景には、病院内での情報共有が遅れ、拡大防止策が後手に回ったことがある。また、国や都への速やかな報告を怠り、8月にあった国などの定例の検査でも院内感染の事実を申告しなかった。同病院は高度な医療を提供する病院として国が指定した「特定機能病院」で、ずさんな対応が問われそうだ。【藤野基文、大場あい、石川隆宣】
 同病院によると、現場の医師や検査部署は今年2月には、同菌の感染が増えていることを把握。だが「散発的な発生」とみて、感染症に対応する院内の感染制御委員会には報告せず、病院全体での対策は取らなかった。
 しかし、4月の時点で感染者は九つの病棟に拡大。こうした事態に病院側は5月の連休明け、初めて院内感染の可能性と対策の必要性を認識した。
 その後の調査で、感染は09年8月から毎月発生していたことが判明。病院は7月末に調査委員会を発足させ、外部の専門家を交えて対応を協議した。感染制御部スタッフの専従人員を増やすことなどの提言を受け、8月9日に強化した新体制をスタートさせた。
 一方、厚生労働省は、同菌の院内感染を疑う事例を把握した場合には、速やかに報告するよう求めている。だが、同病院が東京都や板橋区、厚労省へ報告したのは今月2日。森田茂穂院長は会見で「現場の対策で手いっぱいで報告が遅れた。もっと早く報告すべきだった」と謝罪した。
 報告する機会はほかにもあった。厚労省と都は8月4日、年1回特定機能病院を対象に行う定例の立ち入り検査を実施。医療法で規定されたスタッフの数や医薬品の管理、院内感染防止などについて約7時間調査した。
 しかし、同病院は院内感染の事実は告げず、事実上隠ぺい。都の担当者は「意図的に隠してはいないのでは」としたものの、「検査の対象が広範囲。重大な事故があった場合は病院から申し出てほしい」と話した。
 院内感染対策に詳しい松本哲哉・東京医科大教授(感染制御)は「国内の感染例はまれなので、一つの医療機関での感染例が1、2人にとどまらず、それぞれの確認時期があまり空いていないようなら、院内感染を当然疑うべきだった」と話す。
 また、感染者がいる病棟や診療科が違っていても、患者の検体を調べる部署は限られ、院内で感染が増加していることは把握可能だという。松本教授は「46人という感染者数は非常に多い。もっと早く対策を取ることができたのでは」と指摘する。

◇8フロア11病棟に スタッフ介し感染か
 病院によると、最初の感染者確認は09年8月。西館16階の血液・総合内科病棟に入院していた患者だった。同病棟では今年6月までほぼ毎月のように感染者が確認され、最終的な感染者数も14人と突出して多い。
 最初の感染者が確認された翌月の昨年9月には、1階下の同館15階総合内科病棟でも感染者が見つかり、10月には4階循環器センターに飛び火した。
 11月には東館13階神経内科病棟、12月には東館15階の呼吸器・総合内科病棟と、感染者は病棟を超えて拡大し、最終的には8フロア11病棟にまたがった。院内感染対策を取らないまま、スタッフによって菌が運ばれ拡大した可能性がある。
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■感染者数の推移■
09年 8月 1人
    9月 2人
   10月 2人
   11月 2人
   12月 1人
10年 1月 3人
    2月 4人
    3月 1人
    4月 9人
    5月 7人
    6月 6人
    7月 1人
    8月 7人
  計   46人


---【帝京大院内感染】抗菌剤の適正使用、手洗い…基本対策徹底を---
2010.9.4 01:48
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/100904/crm1009040149004-n1.htm

 帝京大学医学部付属病院で発覚した多剤耐性アシネトバクター菌(MRAB)による院内感染。昨年は福岡大病院でも大規模な院内感染が明らかになっており、専門家は手洗いの徹底など基本的な感染防止対策の徹底を呼びかけている。
 自治医大病院の森沢雄司感染制御部長によると、MRABは栄養が少なく、乾燥した環境でも長期間生き続けることが可能で、耐性を獲得する能力も高い。「手術する医者が使うPHSで感染が広がったという話もあり、医療現場では“やっかいな菌”としてよく知られている。確実な感染拡大防止策もない」と森沢部長は説明する。
 福岡大病院では平成20年10月~21年1月、MRABの院内感染が発生。23人の患者から菌が検出され、4人が死亡した。うち2人は死亡と感染の因果関係が否定できず、人工呼吸器の使用を通じて広がった可能性があるという。
 薬剤耐性菌に詳しい昭和大学の二木芳人教授(臨床感染症学)は「やみくもに抗生物質を使うなど薬の使い方に問題があると、菌は耐性化する」と指摘。感染拡大防止策として(1)早期の発見(2)抗菌剤の適正な使用(3)手洗いなど基本的な感染対策を徹底する-の3点を挙げる。
 帝京大病院では、今年4月から5月に約10人から菌が検出されていたが、国などに報告していなかった。ある総合病院の感染症対策責任者は「うちなら10人も出れば大騒ぎ。病院のガバナンス(統治)はどうなっていたのか」と話した。

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